デンマークのスマートシティ: データを活用した人間中心の都市づくり
中島健祐
選書理由: 小国ながら優れたデザインやITを有するデンマークという国の取り組みが気になった
構成: 社会システムを築く上での行政システム、社会インフラ等の観点で横断的に紹介する。
感想: デンマークという国は人口わずか580万人(北海道位)であるが福祉国家であり幸福度も高い。格差を生まない北欧型社会システムを有するデンマークでは、学歴や地位を気にすることはなくフラットな社会である。これらはアクセルサンダムーサの小説のヤンテの十掟に影響を受けているとされている。国民の対GDP比での税負担は40.6%で世界で2番目に高いが、政治を信頼し、納めた税金が正しく使われていると認識しているので不満はあまりないという。教育への対GDP比は4.7%と1位である。労使により1週間で37時間と労働が決められているので、生産性の高い働き方を求められる。高齢者は特に尊敬されないので、過去の栄光で影響を及ぼすこともないので、縦社会というわけでもない。
デンマークは2050年までに化石燃料から完全脱却を目指している(2030年までに55%)。市民の通勤、通学の41%が自転車であるため、自転車スーパーハイウェイが整備されている。アヌー資源センターは廃棄物発電所でありながらカフェや人工スキーコースが併設されていて、迷惑がられる施設を街中に共存させる取り組みも行われている。nomaが新北欧料理というジャンルを確立したように、クリエイティブな方法で新しい取り組みを行っている。
これらは、高い税負担が政治参加によるオープンガバナンスにより行われていて、医療ポータルsundhed.dkや新電子署名NewIDなどが活用されている。イノベーションを創出するフレームワークとして知的公共需要(IPD)に基づくアプローチが行われている(1)社会課題の特定と優先順位づけ(2)本質的な問題の絞り込み(3)革新チームの編成(4)新たなソリューションの実装。
日本のスマートシティに対する動きは、国土交通省のスマートシティモデルの事業の公募や内閣府が国家戦略特区制度を利用して2030年頃までにスーパーシティを実現するなどがある。デンマークモデルはスマートシティの定義が広い。スマートグリッドやビルエネルギー管理システムなどのエネルギーソリューションに関するインフラ整備が中心であるが、デンマークでは都市計画、エネルギー政策、環境政策に加え市民サービスが相互に関連して議論されるので対象が広く、持続的な廃棄物管理に加え、交通、水管理、ビル管理、冷暖房、エネルギー、ビッグデータと包括的である。そして単にスマートシティを作るのではなく具体的な都市問題を解決する。日本では、スマートシティの社会実装について、エネルギー管理やMaasなどの交通系が一般的であるが、デンマークではより広範囲で廃棄物管理等も含まれる。また、より人間中心であり、スマートシティは住みやすさと持続可能性、そして繁栄の実現を目的として革新的なエコシステムに市民の参加を可能とする仕組みを構築し、デジタルソリューションを活用する社会である。大切なことは新しい技術とガバナンスのモデルがソリューションそのものよりも市民にとって福祉と持続的な手段の成長の方法にナルトいうこと。
デンマーク技術大使はこれからの未来を3つに区分している(1)自由放任主義:政府を最小にしGoogleなど民間のプラットフォームを導入(2)完全&部分統制モデル:ビックデータを含め全てを政府の管理下に置く(3)デンマーク型:人工知能やブロックチェーンなど先端技術を使うも、それらは人間中心の思想と倫理規定に基づいた運用ガイドラインで技術と調和した社会を実現する。
評価:星4.0(A)
ありそうでない人間中心のスマートシティについて描写された著書である。参考文献も豊富です。値段が少しお高いのが懸念点ですね。
こんな人に読んでほしい
未来都市と言われるスマートシティは近い未来訪れると考えられています。中でもGAFAのようなデータ中心のイメージではなく北欧的な人間中心をイメージしたい方には本書はオススメです。参考文献も非常にためになります。
意見は完全に私見ですので、あくまで参考までにお願いします
S 4.5 ~ 5.0 [読むと思考が変わる]
A 4.0 ~ 4.5 [持っていて損はない]
B 3.5 ~ 4.0 [時間があるときに読みたい]
C 3.0 ~ 3.5 [読まなくても良い]
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